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成年後見制度
2種類の成年後見制度
 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。法定後見制度は、既に判断能力が不十分な人のための制度です。
平成11年に「任意後見契約に関する法律」が制定され、任意後見制度は、まだ、判断能力のあるうちに、将来判断能力が衰えたときに備え、自分を守ってもらう契約を結んでおく制度です。「誰に、どのようなことを頼むか」という内容を前もって決めておいて、実際に判断能力が不十分になったときに、契約がスタートします。
日本公証人連合会によると、昨年の任意後見契約の公正証書の作成件数は1万700件で、10年間で2倍以上に増えているとのことです。
高齢者を守る成年後見制度
 成年後見制度は、認知症などにより判断能力が衰えた人や知的障害のある人などの財産を管理し、守る立場の人を成年後見人といい、守られる立場の人を成年被後見人といいます。
成年後見人が行う仕事の内容は大きく分けて2つあります。
①被後見人の生活や医療に関する身上監護。
②被後見人の預貯金や不動産などについて、その取引も含めて安全に管理する財産管理。

身上監護とは、例えば、公的医療保険や公的介護保険を利用して医師や看護師、ホームヘルパーに来てもらえるように、手配や契約手続きをすることです。そして、それらのサービスに必要なお金を被後見人の預金口座から引き出して、支払いをすることなどが財産管理にあたります。
このほか、毎月の電気代やガス代の支払い、被後見人が高齢者施設などへ入居するときの手続きや費用の支払いなども行います。

任意後見契約Q&A
Q【この契約はどのようにして結ぶの?】
 「任意後見契約に関する法律」によって、任意後見契約を結ぶときは、必ず公正証書でしなければならないことになってます。
その理由は、法律的な仕事に深い知識と経験を持っている公証人が関与することにより、本人がその真意に基づいてこの契約を結ぶものであることや契約の内容が法律に適った有効なものであることを確保することを制度的に保証するためです。

Q【この契約の内容は契約を結ぶ者が自由に決めれるの?】
 これは契約ですから、誰を任意後見人として結ぶか、その任意後見人にどこまでの仕事をしてもらうかは、本人と任意後見人となることを引き受けてくれる人との話し合いにより、自由に決めることができます。

Q【任意後見人は身内の者でもなることができるの?】
 法律が任意後見人としてふさわしくないと定めている理由がない限り、誰でも成人であれば任意後見人になることができます。もっとも、任意後見契約は、任意後見人に実印・預貯金通帳の保管、預貯金の払戻し等の財産管理や入院・医療契約、老人ホームへの入所契約等の生活・医療看護に関して、代理権を与えて、いわば全権を任意後見人に委ねる制度ですから、その権限を濫用したりして、この制度を悪用するおそれのない信頼できる人を任意後見人に選ぶことが重要です。そのような条件を満たす限り、信頼できる人であれば本人の子、兄弟姉妹、甥姪等の親族や親しい友人でもかまいません。また、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家や社会福祉協議会、社会福祉法人、信託銀行などの法人を任意後見人とすることもできます。

Q【任意後見人はいつから仕事をするの?】
 この契約は本人の判断能力が低下したときに備えて結ばれるものですから、任意後見人が本人に代わって事務処理をするのは、本人が自分の財産管理等を十分に行うことができなくなってからということになります。そして、家庭裁判所が、任意後見人を監督する立場の任意後見人監督人を選任したときからこの契約の効力が発生し、任意後見人はこの契約で定められた事務処理を始めることになります。

Q【任意後見監督人の選任はどのようにして行われるの?】
 任意後見人になることを引き受けた人、本人の四親等内の親族または本人自身が家庭裁判所に選任を申し立てるのです。本人以外の人が申し立てる場合には、本人が自分の考えや気持ちを表示することができる状況にある限り、本人の同意が必要です。ですから、本人がまだ希望していないのに、その意思に反して任意後見監督人が選任され、任意後見人が本人に代わって仕事を始めるという心配はありません。

Q【任意後見監督人の選任はなぜ必要なの?】
 任意後見人が事務処理をするのは本人の判断能力が低下した後のことですから、任意後見人の事務処理が適正に行われているか否かを本人がチェックするのは難しいので、任意後見監督人にこれをさせることにしているためです。

Q【任意後見監督人はどんなことをするの?】
 任意後見監督人は、任意後見人からその事務処理状況の報告を受け、これに基づいて任意後見人の事務処理状況を家庭裁判所に報告し、その指示を受けて任意後見人を監督します。このようにして家庭裁判所がその選任した任意後見監督人を通じて任意後見人の事務処理を監督することにより、任意後見人の代理権の濫用を防止することができる仕組みになってます。

Q【まだ判断能力低下の状況にあるわけではないのですが、年をとって足腰も不自由なので、代理人を選んで、財産管理等の事務を任せたいのですが、このような契約は結べるの?】
 それは任意後見契約ではありませんが、通常の委任契約としてそのような契約もすることはできます。この場合には、その後、認知症や精神障害等により本人の判断能力が低下したときのために任意後見契約を同時に結んでおくのが良いでしょう。そうすれば、その必要性が生じたときには、すぐに最初に結んだ委任契約から任意後見契約への移行がが円滑に行われ、代理人による事務処理が中断されることを避けることができます。この2つの契約は1通の公正証書ですることができます。この場合も信頼できる人を選ぶことが重要です。

Q【本人が少しぼけ気味であると思われる場合でも、任意後見契約を結ぶことはできるの?】
 契約を結ぶときに、本人に契約を結ぶことができるだけの判断能力があれば、任意後見契約を結ぶことができます。本人にその判断能力があるかどうかは、医師の診断書をとってもらったり、関係者から事情を尋ねたりして公証人が決めます。そして、判断能力があると認められたときには、任意後見契約を結び、契約後直ちに任意後見監督人の選任を申し立て、その選任があり次第すぐに任意後見人により事務処理をしてもらうことができます。もし、判断能力があるとは認められない場合には、任意後見契約を結ぶことはできません。この場合には、別に民法で定められた法定後見の制度によることになります。家庭裁判所に後見開始の申立てをし、後見開始の審判を受けた時は、家庭裁判所の選任した後見人が法廷の代理人として、本人の財産管理、身上監護に関する事務をすることになります。

Q【この契約は登記されるということですがなぜですか?】
 公正証書により任意後見契約を結ぶと、誰が誰にどんな代理権を与えたかという契約内容が、公証人の嘱託により登記されます。
そして、任意後見監督人が選任された後は、任意後見人は登記所から任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した登記事項証明書の交付を受けることができます。任意後見人は、この書面により本人のために一定の代理権を持っていることを証明することができますから、円滑に本人のために代理人としての事務処理を行うことができます。また、その任意後見人の相手方として一定の取引などをする人々もこの登記事項証明書により、その任意後見人が本人の正当な代理人であることを確認することができるので、安心して取引に応ずることができます。つまり、この登記事項証明書は、登記所という官公署が発行する信用性の高い委任状としての役割を果たすことになります。

Q【任意後見契約公正証書をつくるためには、どんな準備が必要なの?】
 必ず必要なものとして次の書類を用意してください。
≪本人≫ 印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票      
≪任意後見人となる人≫ 印鑑登録証明書、住民票
そのほかに、土地や建物の登記簿謄本等が必要な場合もあります。これらについては公証人の指示に従ってください。

Q【任意後見契約公正証書を作るにはどのくらいの費用がかかるの?】
 任意後見契約1件について次のような費用がかかります。
公正証書作成の基本手数料 11,000円
登記嘱託手数料 1,400円
法務局へ納める印紙代 2,600円
書留郵便料 約540円
その他本人から交付する正本等の証書代
任意後見契約と同時に委任契約を結ぶ場合には、以上の費用のほか、委任契約公正証書の作成費用がかかります。
Q【委任した事務処理にかかる費用はどのようにして支払うの?】
 財産管理や医療看護の事務処理にかかる費用は、任意後見人が管理する本人の財産から支出されることになります。契約で任意後見人に報酬を支払うことを決めたときは、その報酬もこの財産から支出されます。

Q【任意後見人や任意後見監督人に対する報酬は必要なの?】
 任意後見契約は委任契約ですので、報酬を支払うことにしても、無償でもかまいません。報酬を支払う場合、その金額とか支払方法はすべて契約で決めることになります。一方、任意後見監督人には報酬が支給されますが、その報酬額は選任した家庭裁判所が決めることになっており、任意後見人の管理する本人の財産から支出されることになります。家庭裁判所は、本人の財産の額、任意後見人の報酬額、監督事務の難易等の諸事情を総合的に考慮して無理のない額を決めているようです。

Q【任意後見契約は途中でやめることができますか?】
 家庭裁判所が任意後見監督人を選任するまえならば、いつでも、どちらからでも契約を解除することができますが、公証人の認証のある内容証明郵便を相手方に送って通告することが必要です。双方が合意のうえこの契約を解除することもできますが、この場合にも公証人の認証を受けた書面によることが必要です。
また、任意後見監督人が選任された後には、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。なお、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。

Q【他に何か参考になることをおしえて。】
 任意後見人の労苦に報いるために、任意後見契約を結ぶと同時に、公正証書で任意後見人により多くの遺産を相続させたり、遺贈をするのが適当な場合も少なくないと思われます。必要書類やその他の資料などもほぼ同様ですので便利です。
いわゆる「振り込め詐欺」「やリフォーム詐欺」など、高齢者の無知につけ込んだあくしつな犯罪が近時問題となっています。このような被害に遭わないためにも、任意後見契約制度の利用をお勧めします。また、広範な代理権が与えられている任意後見制度を悪用した犯罪も起こっています。任意後見契約の相手方を選ぶ場合には信頼できる人を選ぶことが重要です。なお、これを読んだだけではよくわからないこと、またはもっと詳しく知りたいことがありましたら、遠慮うなく当団体に相談してください。
 

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